2018年の第90回春の選抜高校野球大会からタイブレーク制が導入され、夏の甲子園大会でも実施されることになりました。
今回はこの聞きなれないタイブレーク制について、小学生でもわかるように優しく解説していきます。
2018年の選抜高校野球大会からいよいよタイブレーク制が導入されることとなりました。
タイブレーク制についてはこれまで何度も議論に挙がっていましたが、「熱戦が減る」「時期尚早」などの意見も多く、導入が見送られてきました。
ただここにきて一転、タイブレーク制導入の流れが加速し、2018年の選抜高校野球大会から導入が決定しました。(※2018年の夏の全国高校野球選手権大会でも導入が決定)
- タイブレーク制とはどんなルールなのか
- なぜタイブレーク制が必要なのか
- なぜタイブレーク制導入は見送られてきたのか
など、タイブレーク制に関するあれこれを次にご紹介していきます。
高校野球のタイブレーク制とは?
タイブレークの議論うんぬんを語る前に、まずはタイブレークについて詳しく知る必要があります。
タイブレーク制とはソフトボールでは以前から導入されていましたが、延長◯◯回以降に入った場合、無死1、2塁で試合を始めるというルールです。
WBCや高校野球の地方大会ではすでに導入されていましたが、いよいよ全国大会の甲子園大会や地方大会でも導入される運びになりました。(決勝戦を除く)
タイブレークにはポイントがふたつあって、
- 延長◯◯回以降になった場合に導入すること
- 無死1、2塁で試合が始まること
です。
「◯◯回」の部分は大会によって決められていて、春の選抜高校野球大会では準決勝までの試合で延長13回から導入予定ですが、2017年に行われたWBCでは11回以降に実施されていました。
そしてこのタイブレーク制のルールの肝はふたつめの「無死1、2塁で試合が始まること」にあります。
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無死1、2塁で試合が始まることの意味
タイブレーク制の一番の狙いは試合を早く終わらせることにあります。
たとえば延長13回に無死1、2塁で試合が始まったとしましょう。
ここで多くの高校が送りバントでランナーを進めた形を作ろうとします。
1死2、3塁になれば攻撃側はスクイズでもいいですし、外野フライでも1点を取れますので、攻撃のバリエーションはかなり広がり、得点が入る確率はぐっと増えます。
ただしタイブレークでは何となく「1点くらい入るだろう」という淡い期待があるのですが、相手側にもチャンスがあるので絶対1点は取らないと負けてしまうというプレッシャーもあり、意外と点に結びつかないこともあります。
WBCではバントせずに強行してゲッツーになって負けてしまったチームもありました。
守備側としては1点も与えたくないのが本音です。
スクイズを警戒して、前進守備でバックホーム態勢、外野はタッチアップで刺せる程度に浅めの守備位置にして、理想をいえば三振をとれれば万々歳ってところでしょうか。
いずれにせよ、タイブレーク制では様々なことを想定して、攻撃側も守備側もプレーしないといけませんし、1点が敗戦に直結する場面ですから難しい局面であることは間違いありません。
延長戦では後攻が有利といわれていますが、さらにその傾向が強まるのではないでしょうか。
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タイブレーク制はなぜ必要なのか?
ではタイブレーク制はなぜ必要なのでしょうか。
導入に流れが傾いた一番の理由は、球児のケガを予防することです。
そもそも日本の高校生投手の投げすぎの議論は以前からなされてきました。
「熱投、180球の完封勝利!」
など、甲子園のマウンドを一人で投げきること、クタクタになって倒れそうでもがんばっている姿が美談とされる傾向にありました。
高校時代の投球数とプロになってからのケガの可能性については、日本ではまだ明らかなデータはありませんが、高校時代の投球過多がプロに入ってからの肩や肘のケガにつながっているという話は後を絶ちません。
たとえば、プロ野球選手の松坂大輔投手、和田毅投手(福岡ソフトバンクホークス)、藤川球児投手(阪神タイガース)、ダルビッシュ有投手(レンジャーズ)など、高校時代から甲子園で活躍した選手で、みな肘にメスを入れました。
また手術はしていませんが、田中将大投手(ヤンキース)、斎藤佑樹(北海道日本ハムファイターズ)も肘や肩に不安を抱えています。
※所属は2017年6月現在
アメリカでは肘や肩は消耗品とされ、高校時代から球数には制限がかけられて、一定数投げると次の登板までは間隔を空けなくてなりません。
ただし2017年の第89回選抜高校野球大会では、1大会で初めて2試合で延長15回引き分け再試合となり、タイブレーク制への議論が加速することにありました。
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なぜタイブレーク制導入は見送られてきたのか?
高校生のケガの予防という意味では誰でも賛成しそうなタイブレーク制ですが、なぜかこれまでは反対する人も多かったのも事実です。
ではなぜ反対があったのかというと、主に3つの理由があります。
人為的なルールで終わらせることになってもいいのか?
ひとつは人為的なルールで、延長までもつれた試合を無理やり決着に近づけるのはいかがなものかという視点。
たしかにそのまま試合を継続しく方が自然な流れで決着するはずです。(決着せずに延長15回引き分け再試合になる可能性もありますが)
そこに人為的なルールを挟むのか、自然な決着を望むのか、その違いですね。
熱戦こそ高校野球の醍醐味とする勘違い
あと先ほども少しお伝えしたのですが、高校野球では汗だらけ・泥だらけになることを美談とする傾向にあります。
たとえば、
- マウンドで脱水症状寸前でも歯を食いしばって投げぬいた
- 球数が200球を超えた
- 足がつったけどリリーフを仰がなかった
などです。
脱水症状なんて命に関わることなので、本当はその前に大人が止めないといけないのですが・・・。
熱戦(のように見える試合)を観たいというエゴがタイブレーク制の導入を遅らせてきたといえます。
ケガをしてもみんなプロにいくわけじゃないという考え
プロ野球選手のケガと高校時代の投球数に関係があったとしても、そもそも高校球児のすべてがプロ野球選手になるわけではありません。
大学や社会人では野球を続けず、高校でユニフォームを脱ぐ人もいるわけです。
「じゃあケガしてもいいから悔いが残らないようにさせてあげよう」
という変な想いやりが考え方がありました。
これも先ほどの美談の話と同じように、根性論的な考えになってしまいます。悔いなくさせてあげたいという気持ちは分かりますが、子どもの体のことを考えれば間違っていると思います。
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まとめ
高校野球の甲子園大会で導入されるタイブレーク制についてお伝えしてきました。
いずれにせよ確実にいえるのは、
- 健康面を考えると確実にプラスになる
- タイブレーク制で延長戦の戦い方は大きく変わる
ことです。
タイブレークにはタイブレークの楽しさや緊張感があり、それは知らないだけで新しい高校野球や甲子園大会の魅力を作る可能性もあります。
タイブレーク制導入後の延長戦の戦い方にもぜひ注目していきましょう。