病院から退院するときに何かお礼を渡すもの?でも最近医者や看護師にお礼はしちゃいけないっていうし・・・。本当はどっちなの?
そこで病院に勤務している私が、病院職員側から見た退院時のお礼の事情をお伝えします。これを読めば患者サイドはどうするべきか、あと病院職員はどのように考えているのか実際のところがしっかりわかると思うので最後までご覧ください。
病院に入院したときには、医者や看護師をはじめ、たくさんの職員にお世話になります。病気やケガの時期ってすごく辛いので、医者や看護師、リハビリのスタッフなどの献身的な姿勢に感謝することも多いです。
そこで退院するときに何かしらお礼の品を渡そうと思う人も多いのですが、最近病院ではお礼を渡したらダメという話も聞いたことがあると思います。
そもそもお礼の品は渡すものなのでしょうか。いま時の病院の表と裏の事情と一緒にご紹介します。
いま時の病院事情
一昔前は退院時に医者に現金を贈り、看護師(もしくはナースステーション、詰め所)に菓子折りを渡すのが常というか、当たり前のように行われていました。
白い巨塔のドラマを想像してもらえれば分かりますが、その頃の医療従事者のモラルでは貰ったらダメとはなっていませんでしたし、患者も「お世話になったしお礼をしないと」と当たり前のようにお金やお菓子を渡していました。
信じられないかもしれませんが、医者が回診時に胸ポケットにお金の入った封筒を渡されるなんて珍しくありませんでしたし、他のコメディカル(看護師やリハビリのスタッフが多いかな)もけっこうお金をもらっていました。
ただいま現在は病院の事情も大きく変わってきました。病院に行くと、よくこんな注意書きがされています。
医療人もモラルが問われる時代となり、基本的に患者からお礼(お心づけ)の品や現金は全てお断りしています。
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なぜ病院で金品を受け取らなくなったのか?
大きく分けて理由はふたりあります。ひとつはモラルの問題、もうひとつは医療を巡るトラブルが増えたことです。
これは退院時ではなく、手術時を考えたら分かりやすいです。
まず先ほどもお伝えしたようにモラルの問題で、医療従事者が仕事の対価として金品をいただくことが、そもそも間違っていると考えが変わってきたこと。金品を渡した方がいいと患者に思われること自体が異常ですからね。
手術前にお金を渡そうとする人は多いですが、それが他の患者の耳に入ると、「あの人はお金を渡したから先生が丁寧に対応してる」と思われます。
こんなことがまかり通ると、『渡した者勝ち』みたいになってしまいます。
医者も看護師も人間ですから、金品をもらったら多少の恩は感じるので、やはり誰にも平等に医療を提供するためにはもらわない方がいいと業界が変わってきました。
患者やその家族からの金品の授受は病院の規則で禁じられていますし、バレるとクビになることもありますから、うかつにいただくことができないのです。
ふたつ目の事情は医療トラブルが増えたこと。実際にはこちらの方が大きな理由になっているかもしれません。
たとえば手術前にお金をいただいて、手術に関して何かトラブルがあると「お金も渡したのに手術に失敗した」となるわけです。
そうすると病院内でお金を受け取っていたことが明るみに出ますし、もし医療裁判にでもなったらやはり心象が悪くなります。
そもそもの話になりますが、患者からは医療費という形で病院はお金をいただいてますし、そこから医療従事者は給料を受け取ります。ですからそれ以外に本当は払う理由はないわけで、気は使わなくてもいいのです。
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本当に退院時に医師や看護師は金品を受け取らないのか?
手術時にも退院時にも金品は渡さなくてもいいと書きましたが、実際全ての病院で医者も看護師も受け取っていないかというと、受け取っている病院はあります。これは本当です。
絶対受け取っていない病院の医者や看護師は「そんなことはない」と言うかもしれませんが、これは紛れもない事実です。
少し前になりますが、私の知り合いがある公立病院で手術を受けたときに、医者に心づけを渡したら「ありがとう!」といって笑顔で受け取ったそうです。公立病院の医者でもこんな感じです。
退院時に詰め所(ナースステーション)にお菓子を渡したという話もよく聞きますし、うちの部署でもお礼の品をいただくことはあります。
ただすべての病院が受け取るかと言われればそうではありませんし、すべての病院が受け取らないかと言われればそうでもありません。このあたりの見極めは非常に難しいとろこです。
でも「やっぱり何かの形でお礼がしたい!」という人もいらっしゃると思うので、実際に私が一番スマートだと思う方法を次にお伝えします。
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病院退院時にお礼や心づけを渡す方法と注意点
では実際に病院退院時に医者や看護師、他のスタッフにお礼や心づけを渡す方法と注意点を書いていきます。
受け取ってもらえないと思って渡す
ここまでお伝えしてきたように、モラルの問題や、病院で罰則があったり、医療トラブルに巻き込まれないように、医者も看護師も受け取りには慎重になっています。
ですから、もし医者や看護師が受け取らなかったとしても、
「そうですか。残念ですが、仕方ないですね。本当にありがとうございました。」
と感謝の気持ちだけ伝えてください。
医療従事者にとっても、金品を受け取って後々何かトラブルになるというリスクを負うより、感謝の気持ちを聞く方がよっぽど嬉しいんです。
絶対やってはいけないのが、
患者:「お世話になりました。これ(お菓子など)、みなさんで食べてください。」
看護師:「いえ、こういうものは受け取れない決まりになっていますので。」
患者:「そんなかたいこと言わずにどうぞ。」
看護師:「いや受け取れません。お気持ちだけ、ありがたくちょうだい致します。」
患者:「受け取ってもわないと困ります。」
看護師:「いや本当にダメなんです。すみません。」
患者:「いえいえ、そんなことをおっしゃらずに。」
看護師:「そういう規則となっておりますので。」
患者:「誰にも言いませんから。」
という押し問答。これ最悪です。ほんまに辞めてくださいm(__)m
何がダメって、近くに違う患者がいた場合、「あぁ、やっぱりここはお礼を受け取る病院なんだ」と思われることと、実際に受け取っていなくても「あの看護師が何かもらってた」と見られることです。
こんな状況じゃ受け取るのは無理ですから、絶対止めてください。
病院退院時のお礼の品は何がいい?
医者でも看護師でも菓子折りでいいと思います。
医者にはお金を渡そうとする人は多いですが、結局は自分の気持ちなので、それでご自身の気持ちが満たされるならそれでいいのではないでしょうか。金額はいくらでもいいです。
ちなみにバブルの頃には10万円が相場だったとある医者が話していました。いまは3万円もしくは5万円をもらうことが多いようです。
菓子折りは賞味期限はそれほど長くなくてもいいです。ナースステーションのスタッフは多く、一気になくなる可能性が高いので。ただし上の写真のようなすぐに食べないといけない生菓子や辞めた方が無難です。
生物だと休みと重なって食べられない看護師が出てくる可能性がありますし、医者や看護師が休む部屋には大きな冷蔵庫がない場合もあるので冷蔵保管ができないことも考えられます。
理想をいうと小分けされた袋に入ったお菓子(ビスケットやクッキーなど)の方がいいですね。
その理由は、ロールケーキやバームクーヘンなど切って食べないといけないお菓子は食べるときに手間がかかります。医者や看護師は忙しいので、ゆっくり食べる時間がありません。一口でつまめるようなものが一番ありがたいです。
あと看護師が受け取らなかった際に、家で自分が食べれるお菓子を買っておくといいでしょう。そうすれば受け取ってもらえなくても無駄にはなりませんので。
ちなみに以前あった一番一番悲惨なお礼は、マクドナルドのハンバーガー人数分でした。部署の責任者が「困ります」って患者に突き返しましたが、ハンバーガーを10数個突き返された方が困ると思うんだけど・・・。
お礼の品の熨斗(のし)には何と書けばいいか
昔粋な人が「感謝」と書いてくれましたが、これは簡単で「御礼」でいいと思います。
お礼の品を渡す場所とタイミング
これが一番難しい。なぜ難しいかというと、結局お礼の品を受け取ってもらえるかどうかは、このタイミングにかかっているからです。さきほど書いたようにみんなが見ている前だと高確率で受け取ってもらえませんからね。
一番いいのは退院日の、退院時間の最後に医者や看護師が回診に来たときでしょうか。写真のように1対1になる最後のチャンスです。4人部屋だと他の人がいると難しいですが、小声で聞こえないように渡してください。
医師や看護師もこういうことを何度も経験しているのですぐに察知してくれます。あと入院生活が長くなっていれば、患者の性格も理解しているはずなので「この人から受け取ってもいいかな」と思ってもらえれば受け取ってくれるはずです。
逆に「こいつはややこしい患者」だと思われていたら絶対に受け取ってくれませんので、あしからず。
一番ダメなのは荷物をまとめてナースステーションに退院の挨拶をして帰るときです。ナースステーションでは他の患者や他スタッフの目もありますから、ほぼ受け取ってもらえません。
退院後にお礼の品を送るのはダメ?
ときどき退院後にナースステーション(もしくは詰め所)宛てに、菓子折りを送る患者がいます。おそらく当日準備できなかったのか、渡しても受け取ってもらえないと判断したのかは分かりませんが、後から送るという方法をとります。
大学病院や国立病院、市立病院など大きな病院(特に国公立の病院)だと何かわかった時点で送り返させる可能性もありますが、届けられる可能性の方は高いです。ただ直接渡すわけではないのでお礼の気持ちが伝わっているのかどうか、ちょっと微妙ですよね。
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まとめ
病院退院時のお礼についてお伝えしてきました。
長くなったのでポイントをまとめると、
- 基本的には現在病院では退院時のお礼は受け取らない。「基本的」なので受け取る病院もあるし職員もいる。
- お礼は気持ちで伝われば十分。職員はそんなことに期待していない。
- もし菓子折りを渡したときに断られたら、職員の気持ちを汲みとって引き下がろう。
お互いが良い関係を保つためには無理に渡す必要はないということだけ覚えておいてください。
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退院する患者を見送る病院職員の本当の気持ち
最後に患者さんが退院するときの病院職員の本当の気持ちを少し書いておきます。
月並みな言葉ですが、病院職員は患者が元気になって退院してくれることが一番です。だからお礼を欲しいなんて全く思っていません。
あと元気に退院するのと同じくらい切に願っているのは、もう一度入院してこないこと。たとえば脳卒中で入院していた患者さんがまた脳卒中になって入院してくることはあるのですが、そういうときはすごく悲しいです。
ですから「退院するときに何かお礼をしよう」と考えているのなら、再び入院してこないことが何よりのお礼だと思います。
再びに入院しないためにも以下の3つのアドバイスを送ります。
退院後も必ず受診する
病院から退院する患者さんの多くは退院後も通院することになると思います。医者としてはその後の経過が気になるところ。症状に変化はないのか、どう過ごされているのか、経過が知りたいのです。
でも退院したら元気になったと勘違いして、通院を辞めてしまう人がいます。そういう人に限って同じ病気を発症することもあるので、医者が必要と判断した場合は退院後も必ず通院しましょう。
退院時に伝えられた約束を守る
たとえば心臓や血管、肺の病気で入院していた人なら、退院後も禁煙はダメといわれることが多いですし、肝臓の病気で入院していればお酒は控えるようにすすめられます。
病院入院時には医者の言うことを守れても、退院したら医師の目もなくなり元の生活に戻ってしまう人もいます。
ぜひ医師や看護師にいわれた注意を守って生活してください。
薬は必ず正しく飲む
退院時には退院後の薬が処方されることが多いです。この記事を読まれている人もそうではないでしょうか。
ほとんどの人は真面目に薬を飲んでくれるのですが、中には飲み忘れたり、自己判断で薬を辞めてしまったり、自己流の飲み方(時間、量を勝手に変える)をする人もいます。
退院は一区切りでしかないので、その後も病気やケガとの付き合いは付き合いは続きます。薬は医師の指示通り絶対飲んでください。
退院した患者さんが同じ病気やケガで入院してくることほど、病院スタッフとして悲しいことはありませんので、ぜひしっかり守ってくださいね。